公的年金の税方式化の経済効果

執筆者 橋本 恭之  (ファカルティフェロー) /木村 真  (北海道大学)
発行日/NO. 2010年7月  10-J-038
研究プロジェクト 社会経済構造の変化と税制改革
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概要

本稿では、公的年金の税方式化に関する既存研究を整理した上で、税方式化の短期的、長期的な経済効果をシミュレーションした。短期的な分析からは、基礎年金の消費税による税方式化は、社会保険料による税源調達に比べて、家計の厚生水準を低下させる可能性が高いことがわかった。労働供給が固定的に近い場合には、労働に課税する社会保険料のほうが消費税よりも超過負担が小さいためである。一方、長期的には、消費税による税方式化は、所得に課税する社会保険料方式と比べると高い経済成長率を達成できるものの、それは現役世代が消費を抑制するためであり、厚生水準は低下することになる。税方式化の財源を消費税だけに依存することは、逆進性の点からも避けるべきであろう。