執筆者 |
神山 弘行 (岡山大学) |
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発行日/NO. | 2010年6月 10-J-036 |
研究プロジェクト | 「タックス・コンプライアンス」を巡る国際的連携の動きと我が国の政策対応の在り方 |
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概要
事前照会(advance ruling)制度の導入は、法的安定性や予見可能性の確保に資するといわれてきた。しかし、Givati(2009)によると、米国の事前照会制度であるPrivate Letter Rulingの利用は、あまり活発ではない。その理由として、申請手数料や発給までの期間という「直接的なコスト」だけでなく、事前照会制度を利用することで、税務当局からの監視・調査が厳しくなるなどのデメリットが大きいというのである。本稿は、米国のPrivate Letter Rulingの法的構造について概観するとともに、Givati(2009)の主張を紹介・分析することで、我が国の文書回答手続を正規の法制度へと発展させる場合に考慮すべき問題点を明らかにする。その上で、事前照会制度をより利用しやすいものにするためには、「申請者の税務当局に対する匿名性」および「競業他社からの営業秘密の保護」を考慮に入れた制度設計が必要となる点を指摘する。