産業連関表・鉱工業統計を用いた石灰石起源CO2排出などの評価・検証

執筆者 戒能 一成  (研究員)
発行日/NO. 2010年4月  10-J-026
研究プロジェクト 次世代エネルギー統計及び需給動向分析システムの研究開発
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概要

現在の温室効果ガス算定方法のうち、石灰石・ドロマイト起源CO2排出量の算定方法については、用途分類と技術分類による算定方法が混在しているため、重複・脱漏・過大推計などの可能性が指摘されている。

本研究においては、総合エネルギー統計において採用されている産業連関表・鉱工業統計を用いた推計手法を応用し、石灰石・ドロマイト及び関連誘導品に関する不均一価格物量表を作成して用途分類別消費量の全貌を最終消費側から把握し、当該用途分類毎に排出の有無に関する技術分類を行うことで活動量を推計して排出量を算定するという新たな算定方法を開発し、現在の算定方法による排出量と1990年から時系列で比較することによってこれを評価・検証することを試みた。

当該評価・検証の結果、石灰石・ドロマイト起源のCO2排出量は基準年である1990年については現行算定方法と本研究の方法で殆ど同じ結果になったが、以降極めて不安定かつ大きな誤差を生じ、2005~2007年平均では現行算定方法は約1.0 Mt-CO2( 京都議定書基準年総排出量の約0.1%)に達する著しい過大推計となっている旨評価された。

当該不安定かつ大きな誤差を生じる要因を分析し検証した結果、現行算定手法が供給側統計と最終消費側の統計を混在させて推計を行っているため、鉄鋼業などでの石灰石関連誘導品の内部・委託生産分で大規模な重複計上を生じ、陶磁器用・排煙脱硫用など大規模な排出用途が推計から多数脱漏しているなど、現行算定手法が内包する数Mt-CO2規模の複数の誤差要因が相互に干渉・相殺し見掛けの誤差を発生させていたためと判明した。

今後、石灰石・ドロマイト及び関連誘導品の需給に関する関係業界団体・有識者の協力を得、必要最小限の正確な情報を更新した上で、早急に当該部分の算定方法を改定して再計算を実施すべきである。