執筆者 |
森川 正之 (副所長) |
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発行日/NO. | 2010年3月 10-J-023 |
研究プロジェクト | 少子高齢化時代の労働政策へ向けて:日本の労働市場に関する基礎研究 |
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概要
本稿は、1994年~2006年、8000社超の企業パネルデータを用いて企業活動の不安定性と非正規雇用の関係を分析するものである。グローバル化・技術革新等に伴って高まる企業業績のヴォラティリティに焦点を当て、パートタイム労働者だけでなく派遣労働者も含めて分析を行う。
分析結果によれば、派遣労働や臨時・日雇は、同じく非正規労働として議論されるパートタイム雇用に比べてずっと仕事の安定性が低いことが示された。正規雇用と派遣労働は必ずしも代替的ではなく、むしろ派遣労働とパートタイムや臨時・日雇の間での代替関係の存在が示唆される。
また、企業の売上高伸び率のヴォラティリティが大きいほど非正規労働者比率が高く、この関係は製造業において強い。ヴォラティリティが高い企業では、非正規雇用が生産性と強い正の関係を持っている。非正規労働者のセーフティネットや人的資本投資の機会を確保しつつ、企業の労働投入量の柔軟な調整を可能にすることが、経済全体にとって望ましいポリシーミックスだと考えられる。