執筆者 |
樋口美雄 (ファカルティフェロー/慶應義塾大学商学部) /黒澤昌子 (ファカルティフェロー/政策研究大学院大学) /酒井正 (国立社会保障・人口問題研究所) /佐藤一磨 (慶應義塾大学大学院商学研究科) /武石恵美子 (ニッセイ基礎研究所) |
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発行日/NO. | 2006年4月 06-J-036 |
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概要
家庭内の要介護者の存在が高齢者の就業・退職決定にどのような影響を及ぼすのか、高齢者を対象としたパネル・データに基づいて分析を行った。主な分析結果は次の通りである。1)家庭内の要介護者の存在によって、家族の就業は抑制される傾向にある。しかし、2)介護負担によって就業が抑制されるパターンは、男性と女性で異なっている。具体的には、介護は男性では正規雇用や自営業の就業・退職決定に影響するのに対して、女性では非正規雇用の就業・退職決定に影響を与える。 3)2000年に導入された介護保険制度が、介護の就業抑制効果に変化をもたらしたかどうかはっきりした結論は得られなかった。 従来、高齢者就業を阻害しうる要因として公的年金制度や定年制に関心が払われることが多かったが、今後は家族の介護負担を軽減するような施策に力点をおくことも高齢者の就業を促進させるうえでは重要である。