日米韓企業のIT経営に関する比較分析—企業アンケート調査結果—

独立行政法人経済産業研究所(RIETI)は、「IT戦略と企業パフォーマンスに関する日米韓の国際比較(プロジェクト・リーダー:元橋一之ファカルティフェロー、東京大学工学系研究科教授)を実施しました。日本、米国、韓国上場企業に対して実施したアンケート調査の結果、得られた結論は次のとおりです。

  1. 日本企業、米国企業、韓国企業のIT導入状況を全般的に比較してみると、日米の企業はほぼ同等、韓国企業においてやや遅れが見られる。日本企業は、人事・給与・会計や製品の受発注などの定常業務を効率化する「基幹系システム」の導入割合が比較的高く、これに対して米国企業は経営戦略サポートや市場分析・顧客開拓などの「情報系システム」の割合が高い。
  2. SCM(Supply Chain Management)システムの導入状況を見ると日本企業において導入率は高いが、経営情報とのリンケージ度(*)については米国企業の方が進んでいる。従って、日本企業は事業分野ごとの効率化は進んでいるが、全社的な情報流通は遅れているといえる。
    * SCMシステムとERP(Enterprise Resource Management)システムの連携度で測定
  3. 米国企業はIT戦略が経営戦略により明確に位置づけられている。日本企業は明示的ではないが、IT戦略と経営戦略の方向性は一致しているとの認識が高い。韓国企業は両者のリンケージが最も小さい。
  4. ITシステムの貢献度は、上記1.の導入状況と同様、日本企業においては「間接コスト削減」や「在庫コストの削減」などコスト削減において大きく、米国企業は「新商品・サービス・事業開拓」などのイノベーションの創出において大きくなっている。
  5. IT経営を支える企業組織としてCIOの導入率を見ると日米企業は同等で韓国企業はやや遅れている。米国企業のCIOは専業役員の割合が高く、社外からのスカウトの場合が多い。日本企業は社内の総務・財務系出身者で、他の職務との兼業役員の割合が高い。韓国においては社内の情報処理部門の出身者に場合が多い。
  6. ITシステムの外注先については、米国企業は外注先を技術動向を把握するためのパートナーと捉えているのに対し、日本企業はコスト削減のためのアウトソース先として考えている企業が多い。

アンケート集計結果概要

クロス集計結果

日本企業 米国企業 韓国企業
1. 総資産規模別 [PDF:193KB] [PDF:192KB] [PDF:193KB]
2. 業種別 [PDF:195KB] [PDF:193KB] [PDF:193KB]
3. 売上高規模別 [PDF:196KB] [PDF:196KB] [PDF:196KB]

関連資料

元橋一之「日米韓企業のIT経営に関する比較分析」RIETIディスカッションペーパー 07-J-029、2007年。

お問合せ先

元橋一之ファカルティフェロー
e-mail:motohashi-kazuyuki@rieti.go.jp