通商システムとガバナンスに関するサブグループ研究会

「通商システムとガバナンスに関するサブグループ研究会」について

(「国際投資法の現代的課題」(プロジェクトリーダー:小寺彰)サブグループ)

本研究会は、「国際投資法の現代的課題」プロジェクトの一部として、2013年4月から、今後の通商システムとガバナンスに関し、WTOドーハラウンドの現状、メガFTA交渉の現状等を踏まえつつ、グローバルサプライチェーン、サービス貿易、貿易と競争、電子商取引等いくつかの論点について検討することを目的にスタートしたものです。

本コーナーでは、研究会の実施報告や資料等を順次公開していきます。

研究会メンバー

(サブグループリーダー:中富道隆
メンバー:小寺彰、飯田敬輔、荒木一郎、東條吉純、浦田秀次郎、国松麻季、石毛博行、渡邊伸太郎、小野傑、金原主幸(敬称略))

プロジェクト概要

研究概要

WTOに体現されるマルチの貿易システムは、ドーハラウンドの長期化・低迷の中で漂流状態にある。1993年のウルグアイラウンド終結合意以後、既に20年を経過し、ドーハラウンドの決着については全く見通しがない状況である。

その中で、FTA競争、特に急速なメガFTA(TPP、RCEP、日中韓、日EU、TTIPなど)の動きが顕在化している。

企業活動の国際化、サービス経済化が益々進展し、生産要素や情報・技術・ノウハウの国際流通が加速化する中で、通商システムを産業の実態に対応させ、競争力強化につなげていくため何をなすべきか。

本研究は、日本が直面している通商システムの重要課題について検討を行い、そのガバナンスのあり方について提言することを目的とするものである。

より具体的には、WTOやFTAの動きを踏まえつつ、
1)グローバルバリューチェーンと通商ルール
2)サービス貿易
3)競争ルール(含 SOE規律)
4)電子商取引・情報の越境移動
5)通商交渉における透明性
等を中心に検討を行うものである。
(期間:2013年4月~12月)

なお、RIETIでは、2011年10月から12年7月にかけて、「今後の通商システムとガバナンスについてのケーススタディーと方向性の検討」(2011年10月25日~2012年7月31日、プロジェクトリーダー:中富道隆上席研究員)の研究会で、同様な観点から、
1)WTO改革
2)プルリの貿易ルール
等を中心とした検討を行っており、本サブグループは、その成果を踏まえたものである。

この先行研究については、以下等参照。

グローバルバリューチェーン(GVC)と通商ルール

最近、グローバルバリューチェーン(GVC)についての議論が国際的に活発化している。経済の相互依存の実態を明確にした付加価値分析の進展、WTO・ドーハラウンドの低迷、メガFTAの現出、behind the border measuresやサービス貿易への関心の高まりなどを背景とし、GVCの課題に対応できない通商システムへの強い不満と変化への期待が議論活発化の原因である。

本研究では、付加価値分析等GVCに関する議論を俯瞰するとともに、産業界のポジションを踏まえ、通商ルールをGVCに如何に対応させていくか検討し、提言を行う。

サービス貿易

サービス分野は、先進国について見ると、GDPの7割以上を占め、またその貿易量も年々増大しており、モノの貿易と並んで、国際貿易において重要な地位を占めるに至っている。

しかしながら、ウルグアイラウンドの結果としてのサービス合意は、モノの規律と比較して、その歴史も浅く、また、その規律の枠組み、コミットメントの範囲、深さともに到底モノの分野に及ばない。

ドーハラウンドが低迷する中で、サービス分野の自由化とルール作りを牽引する枠組みとして、FTAとともに、有志国間の枠組みであるTISA(Trade in Services Agreements) が注目されている。また、同じく複数国間(プルリ)のセクター合意の枠組みも今後のサービス自由化とルール作りで役割を果たすことが予想され、金融・テレコミサービス合意(1997)の先例価値は大きい。

本研究では、TISA、セクター合意を中心にサービス貿易自由化の道筋について検討し提言する。

競争ルール(含 SOE規律)

TPPや日EU FTAにおいては、競争章を設けるべく交渉中であり、その概要について把握する。また、TPPを中心として議論が加速化している、SOE(State- owned enterprises)の規律について現状と論点を把握整理する。

電子商取引・情報の越境移動

TPPや日EU FTAにおいては、電子商取引の規律について議論が進展しており、その概要について把握する。

また、クラウド技術の進展と新たな情報ビジネスの展開に伴い、情報の越境移動の自由を求める産業界の声が顕在化しており、プライバシーの保護等正当な規制目的実現とのバランスある解の実現に向けた検討が急務である。情報の越境移動問題についての現状と論点、今後の方向性について検討する。

通商交渉における透明性

TPPや日EU FTAにおいては、電子商取引の規律について議論が進展しており、その概要について把握する。

通商交渉は、その性格上、目的実現のために一定の情報秘匿が必要であるが、他方で産業界のニーズや経済実態を踏まえた適切なルール作りに当たっては、適切な産業界やステークホルダーとの連携、情報の流通開示が必要である。金融分野との比較を含め、通商交渉における透明性について視点とあるべき方向性について検討する。