国際連合気候変動枠組条約京都議定書CDM理事会 見聞録

経済産業研究所研究員
東京大学公共政策大学院非常勤講師
CDM理事会理事 戒能 一成

本項の趣旨

本項は、戒能研究員が2011年9月に国際連合気候変動枠組条約京都議定書CDM理事会理事(付属書Ⅰ国代表理事)に選任されたことから、戒能研究員の出席報告に基づき当該理事会における主な議論の内容を広く紹介することを通じて、エネルギー・環境問題や南北問題に関する関係者の理解に貢献するとともに、これに関連する国際的な制度・体制の今後のあり方を考える上での一助としようとするものである。

CDMとは

気候変動枠組条約京都議定書において、日本は2008年度から2012年度末迄の第一約束期間に1990年度比6%の温室効果ガス排出の削減を約束している。ここで、京都議定書においては国内における排出削減に加え排出権取引・CDMなど3つの「京都メカニズム」と称する柔軟性措置を利用することが認められている。

CDM (Clean Development Mechanism) は、当該京都メカニズムの1つであり、京都議定書上の排出削減の約束を持たない発展途上国において先進国が行った投資事業のうち、一定の条件を満たすものに由来する排出削減量を、当該先進国の排出削減量に加算できる制度である。CDMに由来する排出削減量はCDM理事会により認証・発行されるためCER (Certified Emission Reduction) と呼ばれている。

一方、CDMはそれ自体が発展途上国への投資促進効果を持つと共に、CDMにおいて生じたCERの2%相当分は気候変動枠組条約気候変動適応基金 (Adaptation Fund) に納入することが義務づけられ国際連合による発展途上国での気候変動による被害の予防・対策事業の重要な活動資金源を構成しているなど、南北問題に対して十分な配慮が行われた制度内容となっている。

CDM理事会とは

一般に、発展途上国における投資事業が真に温室効果ガスの排出削減に寄与していたかどうかは確実ではないため、CDMにおいては事業適格性・追加性など排出削減を確認・検証するためのさまざまな規約が設けられている。

CDM理事会は京都議定書締約国会議 (CMP) の下で各規約の制定改廃・運営管理と個別事業の認可手続を行う国際連合の機関である。CDM理事会は国際連合の地域分類などに従い選任された投票権を持つ代表理事10名と投票権のない代理理事10名の合計20名で構成され、議長・副議長を互選により選任し業務を遂行している。

CDM理事会の業務を支える事務局はドイツのボンにあるが、国際連合の慣例に従い理事会の2回に1回は発展途上国で開催されている。

CDM理事会の会議運営のうち制度の制定改廃・運営管理に関する部分は透明性確保のため全てWEBCASTにより中継・公開・記録されているが、個別事業に関する部分は守秘義務の対象となるため秘密会議により審議されている。

http://cdm.unfccc.int/EB/index.html

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