順調に滑り出した新しい保証制度 企業支援の真の充実につなげよ

家森 信善
ファカルティフェロー

信用保証を利用した企業に対して、金融機関による支援が手薄になっているのではないかという反省から、金融機関と信用保証協会の間でのリスク分担の在り方を見直して、経営支援を充実させることを目指して、2018年4月から新しい信用保証制度が始まった。関係者の理解も深まり、順調なスタートが切れたと評価できる。しかし、これは入り口での評価であり、企業を育てる金融に関係者が本気で取り組めるかが、改革の成否を握っている。

信用保証制度改革の意図

従来の信用保証制度が手厚すぎて、金融機関の支援実行のインセンティブが阻害されてしまい、結果として保証利用企業の経営改善が進まなかったという反省から、2018年4月に始まった新制度では、金融機関の経営支援をいかに引き出すかが改革のカギとされた。

保証のついていない融資(プロパー融資)がある先に対しては、金融機関は経営支援に熱心になるとみられることから、新しい信用保証制度では、プロパー融資と保証付き融資を組み合わせて企業を支援することが原則とされることになった。ただし、中小企業の置かれている状況が千差万別であることから、一律の数値基準を設定する(例えば、業歴10年の企業については、プロパー融資の比率を50%以上にする)ことはせず、信用保証協会と金融機関が連携して、保証利用企業の成長にとって適切なバランスでリスクを分担していくこととされた。このような柔軟な考え方が、新しい制度の大きな特徴であるが、それ故に、保証協会と民間金融機関の間での役割分担がうまくいかないと、望ましくない状況が起こってしまう心配がある。

一方の極は、レイジーバンク(支援をサボる銀行)が温存される状態である。すなわち、金融機関が、顧客のリスクが高すぎてプロパーを出せないと主張して、それを信用保証協会が容認してしまい、プロパーのない信用保証付き融資ばかりになってしまう状態である。もう一方の極は、信用保証協会がプロパー融資の比率基準を硬直的・機械的に運用し、企業の状態に応じたリスク分担ができず、結果として、企業が保証付き融資も受けられなくなってしまう状態である。

どちらの状態も望ましくないのは明らかであるが、そうした両極端に陥ることがないよ うに、保証協会と民間金融機関のたゆまない努力が求められているのである。

本稿執筆の時点では、新制度が始まって1年も経っておらず、利用できる統計が限られているために、暫定的な評価になるが、信用保証制度の改革が意図した方向に動き始めているかどうかを確認してみたい。

中小企業金融と保証利用の状況

今回の法改正のために、中小企業政策審議会金融ワーキンググループ(金融WG)がまとめた「中小企業・小規模事業者の事業の発展を支える持続可能な信用補完制度の確立に向けて」では、「制度改正により中小企業の資金調達が困難とならないよう」に、十分な準備するように求めていた。金融機関にプロパー融資を求めた結果、金融機関による資金供給が急減するような事態が心配されていたのである。幸い、そうした事態は起こっていないようである。例えば、日本銀行の短観に基づいた中小企業の「金融機関の貸出態度判断DI」によると、2016年以降、20ポイント前後で推移しており、企業は金融機関が貸し出しに積極的であると判断している。特に、新制度が始まった2018年4月以降もDIに変化はなく、中小企業金融に大きな混乱は見られない。

次に、新制度が始まってから信用保証の利用がどのように変化しているかを確認しておこう。図表1は、全国の信用保証協会の保証承諾の最近の状況を前年同月比(の1年の移動平均)で示したものである。この数値が「1」を下回っているということは、前年同月よりも保証承諾が減っていることを意味している。改正法が成立した2017年6月ごろには、保証承諾の減少が加速化していた。しかし、法案の成立後に減少の加速は止まり2018年に入ると減少率は徐々に小さくなり、ついに2018年10~12月には、前年同月比でわずかではあるが増加に転じている。

図表1:保証承諾の推移
図表1:保証承諾の推移
注:前年同月比を計算したうえで、その12カ月の単純平均値をグラフ化したものである。例えば、2016年4月の値は、2015年5月から2016年4月の12カ月の前年同月比の平均値である
出所:全国信用保証協会連合会提供の統計に基づき筆者作成

また、図表には示していないが、2018年4~12月の保証承諾が前年同期間と比較して増しているのは、全国51協会のうち、件数ベースで27協会、金額ベースは31協会であった。つまり、新制度の下で、全国的に保証利用に回復の兆しが見られるのである。

以上のように、新制度の導入が中小企業の資金繰りに問題を起こしておらず、むしろ信用保証の利用について前向きの変化も見られ、順調なスタ-トを切ったと評価できよう。

過度な保証依存は改められたのか

仮に保証承諾の伸びがプラスに転じたとしても、それだけで今回の改革が成功だったと言えないのはもちろんである。民間金融機関が過度な信用保証への依存を改めて、企業のために適切に信用保証を利用する方向に進んでいるかが、本質的に重要な問題である。

筆者は2017年に実施した地域金融機関支店長アンケ-ト(注1)で、「信用保証付きの貸出は、職員の目利き力の向上を阻害している」という意見への共感度を尋ねてみた。2,785人の回答者のうち、「ほとんど共感しない」が45.6%、「全く共感しない」が15.6%である一方、「強く共感」が4.3%、「ある程度共感」が31.7%であった。つまり、3人に1人の地域金融機関支店長は、信用保証への過度な依存が、事業性評価の能力向上にマイナスになることを意識しているのである。

この問題に対処する上で、今回の信用保証制度改革では、前述したようにプロパー融資のインセンティブ効果に期待している。従って、保証付き融資のみの企業が減っているかが、新制度浸透の判断材料の1つとなる。

図表2は、日本政策金融公庫が信用保証の利用企業に対して継続的に実施しているアンケート調査の結果である。これを見ると、「全額利用」(つまり保証付きのみ)という企業の比率には、穏やかであるが低下傾向が見て取れるので、新制度が浸透しつつあると言えよう。

図表2:全額利用企業の割合
図表2:全額利用企業の割合
出所:日本政策金融公庫中小企業事業本部保険企画部「信用保証利用企業動向調査」

また、中小企業庁が2018年12月に発表した「信用保証協会別の保証実績(平成30年上半期)」では、保証承諾先に対する「プロパー融資」の有無の状況が初めて詳しく開示された。それによると、保証承諾案件の保証申込時において、プロパー融資残高があった保証承諾案件の比率は全体では45.3%であり、50%を超えているのが15協会、逆に30%を下回っているのは1協会のみであった。

ちなみに、金融WGにおいて中小企業庁から報告されたところでは、従業員規模6~10人で業歴が5~10年の企業の場合で、この比率は45.1% (2015年4月~2016年2月)であった。今回公表の計数とは直接的な比較はできないが、以前よりも保証利用企業にプロパー融資が行われるようになっていると思われる。

今回の改革で始まった「プロパー融資」に関する開示は、保証協会と金融機関の対話にも活用すべきであろう。例えば、複数県にまたがるA銀行は、B協会ではプロパー融資比率が高いが、C協会では低いといったことが分かる。そういった場合、C協会はA銀行とその理由について議論し、必要に応じて改善を求めるべきなのである。

開示は始まったばかりで、不十分な点も多い。今後、関係者の企業支援の取り組みを活発化するように、開示内容の改善と工夫を重ねていくことが必要であろう。

保証を利用した創業支援

今回の制度改革では、企業のライフステージに応じた信用保証による支援の在り方が深く議論され、創業期の企業に対する保証を使った支援が充実されることとなった。

先述の「信用保証協会別の保証実積(平成30年上半期)」では、“創業保証”の利用状況も詳しく開示された。2018年上期の計数は、全協会ベースでl 万3,288件、695億円であった。例えば、2014年度の通期での実績(1万3,701件、625億円)を半期分で上回っており、信用保証を使って創業を支援しようという姿勢が急速に強まっていることが分かる。この点でも、制度改正の趣旨に沿った取り組みが行われているものと評価できる。

ただ、筆者が愛知県信用保証協会の協力を得て2017年に実施した調査(注2)によると、信用保証を利用している創業期の企業934社のうち、信用保証利用後に金融機関が「定期的に訪問してくれた」というのが45.5%あるものの、「特に何もしてくれなかった」という回答が29.8%もあった。

情報の非対称性の大きな創業期には、信用保証により信用補完を行って、その間に金融機関が企業との関係性を構築していくことが期持されているのであるが、まだ全ての金融機関がそうした対応をとれているわけではなく、改善の余地が残されている。

プロパー融資はあくまでも入り口

最後に、強調しておきたいことがある。今回の改革は、プロパー融資の存在を非常に重視しているが、それはあくまでも、信用保証による企業支援を生かしながら、金融機関の支援を引き出す「手段」だということである。

プロパー融資の焦げ付きの心配という「ムチ」で、現場の職員の意識改革を進めるのは、最初のステップとしては有用であるが、本来の地域金融機関の在り方は、「ムチ」がなくても、顧客企業とともに成長を目指していく「育てる金融」である。それが地域金融機関の生き残りの策でもある。プロパー融資の比率だけにこだわりすぎると、プロパー融資があっても支援姿勢の乏しい金融機関を見逃してしまうことになるのを、著者は心配している。

先述した地域金融機関支店長アンケートでは、ほとんどの支店長が顧客を支援することを金融機関の使命だと思っている。それにもかかわらず、現状では、それができている金融機闘が少ない。今回の信用保証制度の改革が、各金融機関の真の意味での「育てる金融」への取り組みを加速化することを期待している。

『金融ジャーナル』2019年5月号に掲載

脚注
  1. ^ 家森信善編『地方創生のための地域金融機関の役割-金融仲介機能の質向上を目指して-』(中央経済社 2018年3月)
  2. ^ 家森信善編『信用保証制度による創業支援-信用保証制度改革とこれからの保証制度のあり方を考える-(仮題)』(中央経済社、2019年[刊行予定])

2019年6月24日掲載