経済を見る眼 与野党の「責任ある財政」がウソな訳

佐藤 主光
ファカルティフェロー

2月8日の衆議院選挙において与野党とも消費税の減税、その検討を公約に掲げた。

自民党・日本維新の会は選挙後に食料品について消費税率2年間ゼロに向けた「検討を加速させる」とする一方、中道改革連合は同じ食料品への消費税率ゼロを恒久的な措置とした。また、国民民主党は賃金上昇がインフレ率プラス2%で安定するまで消費税を一律5%へ、れいわ新選組と日本共産党は消費税そのものを廃止することを公約としていた。

こうした消費減税の動きに対して経済学者は批判的だ。日本経済研究センター・日本経済新聞が実施したエコノミクスパネルによれば、食料品の消費税ゼロには約9割が否定的な見解を示した。減収額が年間5兆円に上ることによる国の財政悪化懸念や減税の対象とならない外食産業への悪影響などが理由として挙げられている。

そもそも食料品の価格は市場の需給バランスで決まってくる。減税分だけ価格が下がる保証はない。イギリスやフランスではリーマンショックやコロナ禍のときホテルやレストランへの消費税(付加価値税)を軽減したが、消費者への還元(価格下落)は一部にとどまったとのエビデンスもある。

にもかかわらず、国民も政治家も消費税を嫌う。消費税は他の税金に比べて痛税感があるとされる。実際、小売店の多くでは税抜きと税込み両方の価格が表記されている。税込み価格の表記は2021年春から義務化されたが、税抜きとの併記が認められた。消費者は差額に当たる消費税を意識せざるをえない。給与明細や支払い調書を自ら確認しない限り、知らないうちに報酬から天引きされている所得税や社会保険料とは対照的だ。

痛税感そのものは、国民が国の財政に関心を払い、無駄遣いがないか財政規律を求める契機となる。しかし、政治はこうした規律づけを忌避しようとするため、財政赤字を含めて負担感のない形で財源を賄うことを志向しがちだ。

ここで「見える負担」と「見えない負担」を区別すると、消費税などは前者の典型だろう。一方、同じ税金でも法人税は後者に当たる。利益を稼いだ企業が負うものと思われがちだが実態は違う。企業から見れば税金はコストの一部である。原材料費と同様、価格に上乗せするかもしれない。この場合、法人税は消費者に転嫁される。あるいは高い法人税を避けるべく企業が海外に拠点を移すなら、しわ寄せは労働者の雇用に及ぶ。どちらであれ実態は見えにくい。

財政赤字=国債の増発も同様だ。将来の増税で返済されるとしても、いつ、誰が負うかは定かでない。財政赤字のツケがインフレとなって表れたとしても、エネルギー価格の高騰など他の要因と区別しにくい。いずれにせよ政治的に都合がよくても、真に負担がなくなるわけではない。

結局、減税ポピュリズムは消費税など「見える負担」から財政赤字を含む「見えない負担」へシフトさせているにすぎない。消費減税は今後、「国民会議」で議論されるそうだが、こうした減税ポピュリズムに抗した「責任ある」判断が求められよう。

週刊東洋経済 2026年2月21日-28日号に掲載

2026年3月2日掲載

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