そもそも、わが国の財政は楽観視できない。金融政策の転換もあって国債の長期金利は上昇基調にある。わが国はゼロ金利から「金利のある世界」に戻った。10月末で10年債の金利は1.66%、40年債は3%を超えてきた。超長期国債の金利急騰を受け、財務省は満期20年以上の国債の発行額を減らし、短期国債を増額する形での国債発行計画変更を迫られた。国債をめぐる厳しい状況は続くだろう。
日本銀行が国債保有を減額する中、金融規制の影響もあり市中銀行が国債を購入する余力は限られる。否が応でも外国人投資家への依存が高まりそうだ。実際、今年6月時点で外国人投資家の国債保有割合は約12%と、10年前に比べて倍増している。
国債が低金利かつ国内で安定的に消化できる時期は終わった。他方、日銀は短期金利(政策金利)の誘導目標を0.5%に据え置くことを決めている。トランプ関税の影響の見極めなどが理由に挙げられるが、高市政権への政治的な配慮もうかがわれる。
しかし、市場は配慮してくれない。日米の金利差を背景に円安が進行している。輸入物価の上昇はさらなるインフレの要因となる。積極財政は世論から支持されても国債市場や為替市場が懐疑的になると金利上昇や円安による物価高など経済に悪影響が及ぶ。
ではどうすべきか。積極財政を賢く行うのであればメリハリのある予算配分が欠かせない。経済成長に資する重点分野への予算を増やす一方で、優先度の低い分野の予算は減額する。例えば、研究開発税制を含め現行の企業支援を見直すことが考えられる。
新たな支出の財源を既存の支出の抑制で捻出できれば、歳出の膨張による財政赤字は抑えられる。既得権益を背景とした硬直的な国の歳出構造を改める契機にもなろう。併せて事業の進捗を管理し、成果が見込めなければ速やかに支援を取りやめる。積極財政が真に戦略的で責任あるものであれば、こうしたワイズスペンディングが必須といえる。
週刊東洋経済 2025年12月6日号に掲載