逆境で盛り上がる企業の投資

中島 厚志
コンサルティングフェロー

日銀の利上げや金融正常化の下でのベースマネー減少にもかかわらず銀行貸し出しが増えている。たとえば、2025年11月の国内銀行貸出金残高は前年同月比で4.5%増となった。政策融資で企業を支えたコロナ禍の時期を除くと、1991年の統計発表開始以来最大の伸びだ。

貸し出し増に応じて、設備投資の伸びも良好だ。2025年7〜9月期の法人企業統計調査によると、電気機械などの製造業から宿泊、不動産、情報通信といった非製造業業種まで設備投資が盛り上がっている。

物価高に加え、投資が持続的に増える要因がいくつも生じていることが資金需要増の背景にある。好調なインバウンド、人工知能(AI)関連のデータセンター・電力にまで広がる投資や人手不足にともなう省力化のニーズなどがその例だ。

経済協力開発機構(OECD)はそのリポートで、脱グローバル化は起きておらず、不確実性と技術革新、需要の変化などへの対応が世界的な供給網再編を促していると分析した。

世界貿易はこの分析に沿った動きとなっており、米関税引き上げにあっても拡大している。中国企業が直接米国に輸出するかわりに第三国経由の迂回輸出を増やしているのが一因だが、欧米や日本の企業が地政学リスクや通商リスクを低減する供給網の組み替えを大胆に進めていることもある。

内外の環境は複雑さを増しているが、豊富な内部資金を有する日本企業の投資姿勢は積極化している。金融正常化や通商環境の変化も、幅広い分野の企業に生産性向上やリスク分散を促している。26年はこうした投資の広がりが日本経済を支えるとともに新たな時代の産業構造を形成する年になりそうだ。

2026年1月6日 日本経済新聞(夕刊)「十字路」に掲載

2026年1月16日掲載

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