あすへの話題

不幸な地球幸福指数

西水 美恵子
RIETIコンサルティングフェロー

人間は幸せな人生のためにどれだけの資源を使うのか...。178カ国別にその効率を示す地球幸福指数(ハッピー・プラネット・インデックス)を、英国のシンクタンク、新経済学財団が発表した。人生への満足感に平均寿命を掛け、生態学的地球資源活用量で割った指数。人間社会が第1に望むものは健康で幸せな人生なのに、所得上昇に専念しすぎて地球1個では足りない程の資源を使ってしまえば、国民の幸福さえ持続不可能にしてしまう。経済成長に偏りすぎる主流政策思考への大きな挑戦だ。

総合結果はHappyがUn-Happy(不幸)と手直しされた報告書の表紙に一目瞭然。程よい資源活用で国民が幸せに長生きする理想的な国はないが、指数が最も高いのは大洋州の島国バヌアツ共和国。続いてコロンビア、コスタリカと中南米やカリブ海域諸国が上位に並ぶ。特に小さな島国が優位で、報告書は学ぶこと多しと注目する。アジアのトップはベトナムで世界第12位。国民総幸福量を謳うブータンの民は、世界1、2を競う幸せ者だが、平均寿命がまだ短いからアジアの2位、世界第13位。先進国は軒並み揃ってぱっとしない。なかでも特に悲しいのは日本だ。資源を使いすぎて長生きする国民があまり幸せとは感じていないから、アジアの下位で、世界第95位。

我が国の憲法は「幸福追求」を生命・自由と共に「国民の権利」とし「公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と謳う(第3章13条)。国政すべての焦点を国民の幸福追求に絞る日本。政治家は勿論、国民が力を合わせて、本気でこの憲法の精神を実行する日本...。私だけの夢なのだろうか。

2006年7月22日 日本経済新聞に掲載

2006年7月22日掲載

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