| 執筆者 | Shiro ARMSTRONG(ノンレジデントフェロー)/浦田 秀次郎(シニアリサーチアドバイザー / 早稲田大学) |
|---|---|
| 発行日/NO. | 2026年8月 26-J-033 |
| ダウンロード/関連リンク |
概要
本稿は、日本における産業政策の復活と、経済安全保障の圧力の下での産業政策の変容を検証する。現在の日本の政策の転換は、政府による調整、セクター・ターゲティング(特定セクターに対する注力)、戦略的産業に対する公的支援など、戦後における開発志向国家として実践してきた政策要素を活用しながらも、その運用は経済的にも地政学的にも根本的に異なる環境で展開されている点について論じる。かつての産業政策はキャッチアップ型成長と輸出競争力の向上を目指すものであったのに対し、今日ではサプライチェーンの脆弱性、米中の戦略的競争、技術競争、エネルギー安全保障の不安定化、多角的貿易体制の弱体化が政策の策定要因となっている。本稿では、日本の歴史的な産業政策の変遷、政策の根拠としての経済安全保障の再構築、そして経済安全保障推進法(2022年)、半導体補助金、重要鉱物政策、グリーン・トランスフォーメーションの取り組みなどの現行の政策手段の導入をたどりながら、政策転換の経緯を明らかにする。日本の新たな産業政策は、戦略的自律性と戦略的不可欠性の両方を追求する一方で、その過程ではレジリエンス、効率性、財政の持続可能性および開放性の間にトレードオフが発生する点も指摘する。結論として、日本は手本となる存在であると同時に、警鐘となる事例でもあると論じる。日本の産業政策は、先進諸国が世界秩序の不安定化にいかに適応しているかを提示する一方で、補助金に関する国際規律を強化して、国境を越える負の波及効果と財政リスクを適切に管理する必要性を明確に示している。これには、ルールに基づく多角的貿易体制へのコミットメントを再構築することが役立つだろう。
本稿はRIETI DP 26-E-054 Economic Security and the Revival of Industrial Policy in Japanの日本語訳である。