「幸福の効率性」の決定要因:Beyond GDPの観点から

執筆者 鶴見 哲也(南山大学)/溝渕 英之(同志社大学)/熊谷 惇也(福岡大学)/馬奈木 俊介(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2025年2月  25-J-004
研究プロジェクト ウェルビーイング社会実現のための制度設計
ダウンロード/関連リンク

概要

Beyond GDPの議論では、経済的豊かさの代理指標であるGDPだけでは主観的ウェルビーイング上昇に結び付きにくい状況が指摘され、GDP以外の要素の重要性が議論されている。本研究は個人を対象としたアンケートデータを用いて、経済的豊かさの代理指標である所得に加え、近年注目がなされている人的資本の指標である教育と健康に着目する。そのうえで、所得・教育・健康の状況を所与としたときに実現される主観的ウェルビーイングの個人間差異(「幸福の効率性」)を計測する。先行研究ではこの「幸福の効率性」に関して、国家間での差異を明らかにするものがある。しかしながら、「幸福の効率性」の決定要因に関しては、年齢や性別、経済状況や社会関係資本を検証するにとどまっている。地球の環境制約の概念であるプラネタリーバウンダリーの議論を踏まえると、現在の先進国の消費水準は持続可能ではなく、「限られた資源において如何に幸福度を高めていくか」という議論が重要と言える。本研究は個々人の「幸福の効率性」の計測に加えて、「幸福の効率性」を高める要素を明らかにすることで、持続可能な発展と主観的ウェルビーイングの増大を両立させるための方策を検討するものである。検証する「幸福の効率性」の決定要因としては「OECD Better Life Index」で掲げられている要素、および「非物質主義的な考え方」を用いる。分析の結果、働き方の改善、自然資本の存在、および非物質主義的な考え方が「幸福の効率性」を高めることが明らかとなった。