執筆者 | 家森 信善(ファカルティフェロー)/相澤 朋子(日本大学)/浅井 義裕(明治大学)/海野 晋悟(岡山大学)/尾﨑 泰文(釧路公立大学)/尾島 雅夫(神戸大学)/近藤 万峰(愛知学院大学)/津布久 将史(専修大学)/冨村 圭(愛知大学)/永田 邦和(長野県立大学)/橋本 理博(愛知学院大学)/播磨谷 浩三(立命館大学) |
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発行日/NO. | 2024年12月 24-J-030 |
研究プロジェクト | 地域企業の持続的発展と地域金融機関の役割 |
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概要
我々は、2023年11~12月に、地域金融機関の営業店舗の支店長7,000人に対して「地域企業の持続的発展のための地域金融の現状と課題に関する実態調査」を実施し、2,516人からの回答を得ることができた(回収率35.9%)。本稿は、この調査結果の概要を紹介することを目的としている。本調査の最大の特徴は、2017年および2019年調査と同様に、地域金融機関の本部ではなく、実際に顧客と接触している営業現場の責任者である支店長の方々を調査の対象にして、現在の重要な地域金融の課題についての質問を行っている点である。一方で、2017年や2019年の調査と同様の人事制度や事業性評価、顧客関係に関する質問も多く、コロナ禍などを経て地域金融機関の支店長の意識や行動の変化を明らかにすることが可能な点も重要な強みである。
主な結果を紹介すると、地域金融機関の支店長の多くは50歳代で、豊富な中小企業金融の経験を持ち、やりがいを感じているが、2017年や2019年の調査と比べるとやりがいは低下傾向にある。特に信用金庫や信用組合の支店長は経営環境の変化や業務負担の増加により、やりがいが低下している。入社当初から「地元のために働ける」という意識を持つ支店長が多く、その意識は取引先からの感謝の声で強まっているが、若手職員にそうした成功体験を与えることが十分にできておらず、若手職員の離職につながっている可能性がある。取引先企業数の増加に伴い、支店職員が全ての取引先に対応するのが難しくなっており、支援の効率化が求められている。デジタル化支援や脱炭素化の支援に積極的に取り組んでいるが、取引先や金融機関自身へのプラスの影響が十分に出ていない。また、BCP支援や経営者保証の課題についても取り組んでおり、信用保証協会との連携が強化されているが、依然として対応途上と言える。地域金融機関は人材育成や評価においても多くの課題に直面しており、ポストコロナに対応した人事評価制度の構築が必要である。