公共心の決定要因に関する実証分析―成人時の所得水準vs.学童時の社会性獲得

執筆者 久米 功一(東洋大学)/鶴 光太郎(ファカルティフェロー)/佐野 晋平(神戸大学)/安井 健悟(青山学院大学)
発行日/NO. 2024年10月  24-J-024
研究プロジェクト AI時代の雇用・教育改革
ダウンロード/関連リンク

概要

さまざまな研究によって、道徳や社会規範を含んだ広い意味での公共心が政策の選択やその効果的な実践に影響することが示されているが、公共心がどのように育まれるかについては、十分に分析されてこなかった。そこで、本研究は、公共心に影響を与える要因として、現在の所得や子供の頃の暮らし向きといった経済状況と、学校・地域での人との関わりを通じた社会性の獲得に着目した実証分析を行った。分析の結果、「貧すれば鈍する」といったような所得・暮らし向きとの関係については、公共心に対して、現在の所得との相関が弱い一方、過去の暮らし向きが有意に正に関係していた。また、小学生の頃に子ども同士で遊んだり、地域の行事に参加したりした経験は、公共心の高さと正に相関していた。これらの結果は、政府がこれまでも推進してきた子どもへの貧困対策や学校・地域で社会性の獲得につながる教育機会創出が、公共心の涵養の観点からみても重要であるとの明確なエビデンスを示しているといえる。