ガバメントアクセスに焦点を当てたDFFTの具体化に向けた有志国間連携の在り方

執筆者 藤井 康次郎(西村あさひ法律事務所)/室町 峻哉(西村あさひ法律事務所)
発行日/NO. 2024年7月  24-J-018
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第VI期)
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概要

日本政府が推進するDFFTの具体化においては、民間部門が保有するデータへのガバメントアクセスに対する規律をいかに図っていくかが重要である。例えば、EUのGDPRにおいては、第三国におけるガバメントアクセスからの保護をデータ越境移転の条件とする解釈・実務が発展しており、データ越境移転を促進するためには、ガバメントアクセスへの対応が必要となる。また、国際的にはOECDにおいて信頼性や適正性等の観点から個人データに対するガバメントアクセスに係る規律要素に関する議論が進んでいる。貿易協定においても、個人情報保護の水準を確保しつつ、データの自由な流通を促進するための規定が盛り込まれるようになっている。

他方で、データの自由な流通を促進する上では、法執行の実効性の観点から、自国の領域内のみならず、越境移転先に所在するデータの証拠収集をはじめとするガバメントアクセスの実効性が担保されていることも重要である。この点について、米国CLOUD Actは、捜査目的での越境的なデータ提出要求のための行政協定の枠組みを規定しており、有志国間でかかる越境的なガバメントアクセスの実効性を確保しつつ、適正性の観点からこれを規律する手段となり得る。

本稿は、こうした動向を踏まえて、ガバメントアクセスに焦点を当てたDFFTの具体化に向けた有志国間連携の在り方を検討するものである。