執筆者 | 伊藤 隆敏(コロンビア大学)/鯉渕 賢(中央大学)/佐藤 清隆(横浜国立大学)/清水 順子(学習院大学)/吉見 太洋(中央大学) |
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発行日/NO. | 2024年1月 24-J-004 |
研究プロジェクト | 為替レートと国際通貨 |
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概要
本論文は、日本企業のインボイス通貨選択と為替リスク管理についての現状とその変化についての分析結果を報告する。海外活動を行っている製造業の全上場企業964社を対象として2021年度内の2022年3月に調査票を送付して実施した「日本の貿易建値通貨の選択に関するアンケート調査」の回答結果について、輸出におけるインボイス通貨の選択、為替リスク管理、価格改定等の論点について、2009年度以降4年毎に実施してきた過去3度の調査結果と比較による分析を行った。主な結果は以下の通りである。第1に、日本からの総輸出に占めるインボイス通貨別輸出比率は、米ドル建て比率が約半分を占める傾向が継続している。そして、円建て比率は41%であり、前回調査と比較してほぼ横ばいとなった。アジア諸国通貨を含むその他通貨建て比率は6%超に上昇し、今回調査で初めてユーロ建て比率を上回った。第2に、為替リスク管理については、市場を通じた為替リスクヘッジ手段を利用している割合は、過去の90%超の割合から、80%台に若干低下した。第3に、為替レートの変動が予想される時の価格とインボイス通貨の変更について、円高予想時と比較して、円安予想時に価格変更する企業の割合は低いことが報告される。この傾向は過去の調査でも同様であり、今回調査で改めて確認された。最後に、輸出仕向け国・地域向けのインボイス通貨別比率の分析によって、日本企業のアジア主要相手国、特に中国、タイ、インド向け輸出における相手国通貨建て取引の増加が観察された。