日本企業の為替リスク管理とインボイス通貨選択:2022年度日本企業の海外現地法人に対するアンケート調査結果概要

執筆者 佐藤 清隆(横浜国立大学)/鯉渕 賢(中央大学)/伊藤 隆敏(コロンビア大学)/清水 順子(学習院大学)/吉見 太洋(中央大学)
発行日/NO. 2024年1月  24-J-002
研究プロジェクト 為替レートと国際通貨
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概要

本論文は、2023年1月に22,529社の日系海外現地法人に調査票を送付して実施した「日本企業の海外現地法人に対するインボイス通貨選択アンケート調査」の結果をまとめたものである。2022年2月のロシアのウクライナ侵攻により、世界的に資源価格が高騰し、日本経済も2022年を通じて急速な円安進行を経験した。こうした背景のもとで日系海外現地法人1,390社から得た回答に基づいて考察し、以下の結果が得られた。第一に、アジア所在現地法人はアジア通貨建て貿易を増やしているが、その多くは日本の本社企業との企業内貿易における使用であり、前回の2018年度調査と比較すると、アジア通貨建て取引はあまり伸びていない。第二に、中国所在現地法人は、日本の本社企業との輸出入で人民元建て取引を多く行っているが、他の海外諸国との貿易では人民元建て取引が進んでいない。むしろアジア域内貿易では人民元以外のアジア通貨建て取引の方が多く行われている。第三に、アジアで活動する日系販売拠点現地法人は円とドルを中心に製品の輸入・調達を行い、現地販売は現地通貨建てで行っている。この通貨選択のミスマッチによって同現地法人は大きな為替リスクに晒されており、為替リスクの管理が重要な戦略課題となっている。