執筆者 | 久米 功一(東洋大学)/鶴 光太郎(ファカルティフェロー)/川上 淳之(東洋大学) |
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発行日/NO. | 2023年10月 23-J-044 |
研究プロジェクト | AI時代の雇用・教育改革 |
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概要
本稿では、経済産業研究所(RIETI)が実施した2021年度「Withコロナ・AI時代における新たな働き方に関するインターネット調査」の個票データを用いて、新型コロナウイルス感染症拡大前後の在宅勤務と生産性の関係を実証的に分析した。具体的には、(1)在宅勤務の実施頻度・順応性を高め得る要因、(2)在宅勤務の頻度と生産性(主観的生産性、生産性変化(コロナ前対比)、生産性変化(予想対比))の関係、(3)在宅勤務の生産性変化(コロナ前対比)・生産性変化(予想対比)と在宅勤務の課題などとの関係を検証した。
その結果、(1)職場・自宅のインフラや在宅勤務制度が整備されているほど、在宅勤務の頻度が高く、在宅勤務に慣れるまでの時間が短い、(2)在宅勤務の頻度と主観的生産性の間には正の相関がみられたが、操作変数法を用いるとそれは有意でなくなった。(3)技術によってコミュニケーションの問題を解決可能だと考えている人ほど、在宅勤務の生産性変化(コロナ前対比)や生産性変化(予想対比))はプラスであった。
これらの結果は、在宅勤務と生産性との関係の分析においては、在宅勤務者の在宅勤務前の生産性水準や生産性への効果の時間的な経過を考慮する必要があること、インフラ面でのサポートや在宅勤務制度の整備により在宅勤務の生産性を高めうること、技術や工夫によるコミュニケーションの課題に対する解決が期待されることを示唆している。