男女別学高校出身者の教育および労働市場のアウトカム

執筆者 安井 健悟(青山学院大学)/佐野 晋平(神戸大学)/久米 功一(東洋大学)/鶴 光太郎(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2023年10月  23-J-042
研究プロジェクト AI時代の雇用・教育改革
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概要

本論文では、経済産業研究所が2019年に実施した「全世代的な教育・訓練と認知・非認知能力に関するインターネット調査」の個票データを用いて、男女別学高校出身であることと個人レベルの教育および労働市場のアウトカムの関係を実証的に分析した。まず、中学時代の社会経済的背景・成績・居住都道府県の学校の教育資源や小学校時代の習い事・経験についての包括的な変数群と私学高校ダミーおよび高校の学力レベル(大学進学率)をコントロールした上で、OLSにより共学出身者に対する男女別学出身者の教育および労働市場のアウトカムの差を推定した。その結果、男性については男子校出身者の難関大学卒業確率と賃金が高いことが確認され、女性については女子校出身者の賃金が低いことが確認され、その傾向は男性では賃金分布の高分位、女性では低分位でより顕著にみられた。しかしながら、15歳時の居住都道府県における別学校の割合を操作変数として推定したところ、女子校における教育によって賃金が低くなっているわけではないことが示された。このことから、分析対象者(調査時点で20代後半から50代)が高校教育を受けた時点において、賃金という労働市場における個人の成果を重視しない女子もしくはその家庭が女子校を志向するセレクションがあったことが示唆される。ただし、賃金の分布の高分位の女性についてはそのような傾向はみられないことも留意すべきである。