科学技術革新における制度設計に関する一考察—中国の「新型挙国体制」とEUの「開放的戦略自主性」との比較分析から

執筆者 孟 健軍(客員研究員)/潘 墨涛(武漢大学)
発行日/NO. 2023年4月  23-J-015
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概要

中国政府は近年、「新型挙国体制」という概念に基づいて科学技術革新の制度設計を行っている。本研究ではなぜそうした政策を採用したのかについてその必然性と合理性、および制度設計の深層ロジックに対してより客観的な認識を形成するために、EUの「開放的戦略自主性」という科学技術革新体制との比較分析から検証を行う。

「新型挙国体制」に関する中国政府の公式定義は「国家の重点事業に国力と資源を組織的に集中する新体制」であり、その目的は科学技術の「キャッチアップ」という政治的意図より実用的属性の意味が強い。それに対してEUの「開放的戦略自主性」はEUの当面の発展戦略であり、米中競争時代に提案された産物である。具体的な科学技術革新政策はこの戦略体制に従い、EU内各国の開放的自主性を活用しEUの自主独立を維持することを強調している。

本稿は、制度設計の視点から中国の「新型挙国体制」とEUの「開放的戦略自主性」を具体的に比較し、その背景、組織形態、人材と資金の配分等のいくつかの側面から展開し、現時点の効果を評価し、その問題点を指摘する。