執筆者 | 西川 浩平(関西大学)/大橋 弘(ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2022年10月 22-J-039 |
研究プロジェクト | 産業組織に関する基盤的政策研究 |
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概要
医師の処方に依らず、市販薬(OTC医薬品)を活用して自身の健康を管理するセルフメディケーションへの世界的な関心が高まっている。日本も医療医薬品からの転用であるスイッチOTC医薬品の普及を目的とするセルフメディケーション税制を導入し、セルフメディケーションの促進、ひいては薬剤費抑制を目指している。他方で、この税制の財政的効果はこれまで検証されてこなかった。本稿では、セルフメディケーション税制が薬剤費に及ぼす影響を、レセプトデータを用いて定量的に明らかにする。アレルギー性鼻炎薬市場を対象に、患者の受診行動、医師の処方行動への影響を分析したところ、セルフメディケーション税制を通じて、患者の受診頻度は1.8%、医師の処方量も6.0%減少したことが示された。さらに、セルフメディケーション税制が導入されなかったとするシミュレーションを通じて、薬剤費への影響を詳細に検証したところ、医師の処方の変化により、薬剤費が4.9%抑制されたことを示す結果が得られた。最終的に、患者の受診頻度の減少による薬剤費の変化分を含む、全体としてのセルフメディケーション税制の薬剤費抑制効果を試算したところ、同税制を通じて5.8%の抑制を実現したことが明らかとなった。