風しんの抗体検査とワクチン接種を促進するためのナッジ・メッセージの探究―全国規模オンライン・フィールド実験による効果検証―

執筆者 加藤 大貴(大阪大学)/佐々木 周作(東北学院大学)/大竹 文雄(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2022年3月  22-J-010
研究プロジェクト 日本におけるエビデンスに基づく政策形成の実装
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概要

現在、ワクチン接種の向上策として、伝統的に考えられてきた金銭的インセンティブだけでなく、行動経済学の知見に基づいたナッジの活用が検討されている。本研究は、全国規模のオンライン調査でランダム化比較試験(RCT)を実施して、どのようなナッジ・メッセージが風しんの抗体検査受検・ワクチン接種を促進するのかを検証した。主な結果は次の通りである。第一に、2019年度に無料のクーポン券が自治体から自動的に送付された男性においては、妊娠初期の女性に風しんを感染させてしまうことで胎児の健康が損なわれる可能性があることを強調した利他的なメッセージは抗体検査受検の意向と行動に正の効果を持っていた。第二に、ナッジ・メッセージの種類やクーポン券の送付の有無に関わらず、抗体検査の結果が陰性であった(抗体を保有していない)人のほとんどはその後ワクチンを接種していることが分かった。このことは、抗体保有率を高めるためには、検査後の陰性者ではなく検査前の対象者に介入して検査の受検率を高めるような政策に焦点を当てるべきであり、本研究の利他的なメッセージは風しんの抗体保有率を高めるために有効なメッセージであることを示唆している。第三に、2019年度はクーポン券を入手するには自ら申し込む必要のあった男性においては、いずれのナッジ・メッセージは統計的に有意な効果を示さなかった。