コンパクトシティが移動距離、移動手段ごとの所要時間に与える影響の分析

執筆者 沓澤 隆司 (コンサルティングフェロー)/赤井 伸郎 (大阪大学)/竹本 亨 (日本大学)
発行日/NO. 2021年5月  21-J-025
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概要

本論文は、都市の中心部に人口が集中しているコンパクトシティに関して、そのコンパクト度の高さが移動距離や歩行、公共交通、自動車といった移動手段ごとの所要時間に与える影響について検証を行うものである。人口が都市の中心部に集まり、コンパクト度が高い状態の下では、その都市の市街地の規模が小さくなるために移動距離が短くなり、その結果、移動の手段としての公共交通や歩行による所要時間が大きなものとなる一方で、自動車の所要時間が小さなものとなり、最終的には、住民の良好な健康水準の確保、エネルギー消費や環境負荷の抑制に寄与することが予想される。

この場合、都市のコンパクト度自体は、元々鉄道、バスなどの公共交通網が整備されていることなどによりもたらされる内生的な変数であり、OLSによる分析では、同時性バイアスが生ずるおそれがある。また、都市のコンパクト度が移動手段ごとの所要時間に与える影響の度合いも年齢、性別、職業や就業形態により違いが生ずる可能性がある。

そこで、本論文では、コンパクトシティと移動距離、移動手段ごとの所要時間との関係を検証するため、都市のコンパクト度の指標である「基準化された標準距離(NSD)」が移動距離、歩行、鉄道、バスなどの公共交通や自動車による移動手段ごとの所要時間に与える影響について、同時性バイアスを是正するために操作変数を用いるとともに、年齢、性別、職業や就業形態の属性別にNSDがもたらす影響について検証を行うものである。

Published: 沓澤隆司, 赤井伸郎, 竹本亨「都市のコンパクト度と住民の移動距離や移動時間に関する分析」」,『交通学研究』第65号, 75-82, 2022年.
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