新型コロナの影響下での在宅勤務の推進と男女の機会の不平等

執筆者 山口 一男 (客員研究員)/大沢 真知子 (日本女子大学)
発行日/NO. 2021年1月  21-J-002
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概要

新型コロナの影響の下で、欧米の多くの企業は在宅勤務・テレワークを積極的に採用し、この利点に新たに気づいた企業も多く、「新型コロナ後」でも引き続き在宅勤務型の働き方を採用する予定の企業も多いといわれている。より一般には新型コロナの経験により、働き方に不可逆的社会変化が生まれようとしている。一方日本における、新型コロナ下における在宅勤務・テレワークの取り組みの推進はより限定的である。本稿では、日本における新型コロナ下での在宅勤務の機会に対し、男女に顕著な機会格差があり、従来ワークライフバランス上、在宅勤務がより好都合と思われている女性の方がかえって男性より機会が少ないという現状と、その決定要因を実証的に明らかにする。より具体的には、分析結果は在宅勤務の機会の男女格差が、雇用形態(正規・非正規の別)、職業、企業の業種、企業の従業員規模の4つ要因の男女の違いによってほぼ完全に説明でき、社会構造的要因が機会の差を生じさせていることを示す。本稿は、さらにどの要因がどの程度影響するのかを明らかにし、その理論的インプリケーションについても併せて議論する。