九州における旅館・ホテルの費用効率性:電子商取引もしくは個別事業との関連

執筆者 後閑 利隆 (日本貿易振興機構アジア経済研究所)
発行日/NO. 2020年6月  20-J-031
研究プロジェクト 人口減少下における地域経済の安定的発展の研究
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概要

九州では、宿泊業の生産性の向上を目的とした取り組みがなされている。そのため、本稿では、電子商取引の有無もしくは宿泊以外の個別事業の開始及び中止が旅館ホテルの費用効率性の変化にどのような影響を及ぼすかを調べた。

九州と全国において、宿泊以外の消費者向け事業を行わなかった旅館ホテルの費用効率性は、消費者とも企業とも電子商取引を開始(中止)した旅館ホテルにおいて、向上(低下)した可能性が見られ、宿泊以外の消費者向け事業を行った旅館ホテルの費用効率性は電子商取引の有無とは概して無関係と見られた。さらに、九州と全国において、売り上げに占める消費者との電子商取引の割合の変化、もしくは、消費者との電子商取引の売上額の変化は費用効率性の変化とは概して無関係であると見られた。

費用効率性の変化と関係があると見られる個別事業は九州と全国で異なることがわかった。旅館ホテルが行った宿泊以外の個別事業によっては、電子商取引の有無よりも宿泊以外の個別事業の開始及び中止の方が費用効率性に大きな影響を与えた場合がありうることがわかった。また、費用効率性と個別事業との関係は個別事業ごとに異なることが明らかになり、旅館ホテルの個別事業数の増減と費用効率性の変化は概して無関係と見られた。

平成28年熊本地震で震度6弱以上であった大字に立地する旅館ホテルの費用効率性は、宿泊以外の消費者向け事業を行わなかった旅館ホテルにおいて、向上した可能性が高いと見られた。一方で、宿泊以外の消費者向け事業を行った旅館ホテルの費用効率性の変化は平成28年熊本地震の発生とは概して無関係であると見られた。