土地利用や近接性の変化が東京都内の不動産価格に与える影響の分析

執筆者 沓澤 隆司 (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2020年5月  20-J-028
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概要

本論文では、東京都内のマンションの取引価格を元に、リピートセールス法による不動産価格の推計を通じて、商業用地や地震に関する建物倒壊危険度などの土地利用の状況や就業機会の存在する場所への近接性が不動産価格に与える影響を分析するものである。

こうした土地利用や近接性の不動産価格への影響の評価はクロスセクションデータに基づくヘドニック法によるものが多く、時系列的な変化による分析は十分に行われていない。しかし、こうした分析では過少な変数によるバイアスが生ずるおそれがあることが批判されている。これに対して複数回取引された不動産を対象にその価格の変化を分析するリピートセールス法による不動産価格の推計をサンプル・セレクション・バイアスなどの課題に適切に対処した上で行えば、これらの土地利用や近接性の変化が及ぼす影響を適切に評価できると考えられる。

そこで、本論文では、ヘックマンの2段階推定法を用いて、サンプル・セレクション・バイアスを補正したリピートセールス法を通じて、東京都内の土地利用の変化や就業機会の存在する場所への近接性が不動産価格に与える影響を分析し、商業用地割合の変化、地震時の建物倒壊危険度の低下や就業者近接性指標の高まりが不動産価格を上昇させる効果をもたらすことが明らかとなった。今後は、土地利用の変化、地震災害のリスク低下や都市の中心業務地域(CBA)へのアクセスの改善がもたらす都市の社会経済活動への影響についてリピートセールス法を用いて明らかにしていくことが求められる。