インバウンド台頭期における九州の産業集積のマーケットポテンシャルが企業活動と港湾の利活用に与える影響に関するパネルデータ分析

執筆者 亀山 嘉大 (佐賀大学)
発行日/NO. 2020年4月  20-J-027
研究プロジェクト 人口減少下における地域経済の安定的発展の研究
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概要

2003年以降、インバウンドの誘致の推進によって、クルーズ船や格安航空会社(LCC)などを活用した訪日外国人旅行者が増加の一途を辿っている。九州の主要港湾では、外航クルーズ船の受け入れのために、コンテナやバルクの港湾であったものを用途変更し、チャーターバスなどで観光地や中心地を結んでいる。これらの港湾は、本来、製造業の輸出入で活用されるために開港されており、九州の産業集積の動向と関係があったものと想定できる。リーディングインダストリーが製造業から観光業にシフトする中で、同じく2000年代初頭から実施されてきた産業クラスターの形成は、イノベーションの促進や集積力の強化に繋がっているが、港湾の利活用に繋がっていない可能性がある。このような問題意識のもと、本稿では、九州地域においてクルーズ船の寄港が増えている港湾とその後背地に立地している製造業を取り上げる。「個々の企業の製造品出荷額を輸送費で割り引き産業別に集計した地域需要の大きさ」で定義したマーケットポテンシャル(MP)を都道府県間の製造業の輸送費に基づき算出した上で、第1に、MPが企業の生産性や賃金にどのような影響を与えているのか、第2に、MPや港湾の機能が物流にどのような影響を与えているのかを分析した。推定結果から、MPは製造業の生産性や賃金に寄与しており、また、MPや港湾施設の経営収支(投資規模)が物流に寄与していることを示した。