労働規制変化による技術利用変化と生産性に対する影響

執筆者 田中 健太 (武蔵大学)/馬奈木 俊介 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2020年4月  20-J-025
研究プロジェクト 人工知能のマクロ・ミクロ経済動態に与える影響と諸課題への対応の分析
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概要

本研究では2012年の労働者派遣法の改正に伴って発生したと考えられる、労働法規制の強化によって、企業の生産要素選択、及び生産性に対して、どのような影響を与えたか分析を行う。労働法規制の大きな変化は、労働需給だけでなく、既存技術、及びIT技術のような新技術の利用まで影響を与え、企業経営の構造を大きく変化させる可能性がある。本研究では労働規制変化に対する日本企業の技術や労働需要の変化、及びその帰結としての生産性に対する影響について分析を行う。分析の結果、労働者派遣法の影響によって、影響を受けやすい企業ほど、派遣労働者の労働需要、IT等の新技術の蓄積を捉える無形固定資産ストックをともに減少させる結果を示した。また無形固定資産ストックの増加が企業の生産性を向上させる可能性も示された。こうした結果から労働法規制が技術、労働の利用の在り方に影響を与え、間接的に生産性に影響を与えている可能性があり、今後の労働と技術普及の在り方について、政策的示唆を与える結果が示された。