責任共有制度のもとでの金融機関の信用保証利用態度―地域金融機関支店長アンケートに基づく分析―

執筆者 家森 信善 (神戸大学)
発行日/NO. 2020年4月  20-J-020
研究プロジェクト 企業金融・企業行動ダイナミクス研究会
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概要

2018年4月に始まった信用保証制度の見直しでは、金融機関に対してプロパー融資の実施を求めていることが大きな特徴である。この見直しの根底にあった問題意識は、プロパー融資先に比べて信用保証付き融資先(たとえ、部分保証であっても)に対して、十分に審査をせず、また融資後にも十分に支援をしていない金融機関があるのではないかという点であった。そこで、本稿は、2017年1月に経済産業研究所(RIETI)が実施した「現場からみた地方創生に向けた地域金融の現状と課題に関する実態調査」を利用して、こうした問題意識の妥当性を確認した。この調査によると、60%の地域金融機関支店長は信用保証付き融資が職員の目利き力の向上の障害にはなっていないと考えているものの、35%の回答者は向上の障害になっていると回答しており、従来の信用保証利用には問題が残ることが確認できた。つまり、部分保証(責任共有制度)の導入だけでは金融機関の行動を十分に変えられなかったことがわかり、プロパー融資を求めた2018年の制度見直しの問題意識は妥当であったと評価できよう。そして、信用保証の審査を甘くしている金融機関や信用保証付き融資の職員評価をプロパー融資よりも高くしている金融機関の特徴を調べると、①競争環境が厳しく顧客を失っている、②金利よりも融資量の確保を優先している、③職場としてやりがいが低い、④営業活動で顧客との関係性を構築するのが難しくなっている、⑤事業性評価に取り組めていない、⑥税理士との関係性が弱い、⑦営業担当者の目利き力が向上していない、⑧目利き力向上のために取り組めていない、⑨本部に対する不満が強い、⑩内部の人材が不足している、⑪既存企業に対する経営支援の取り組みを(相対的に)評価していない、⑫減点主義的な人事評価制度を取っている、⑬企業支援への使命感が弱い、⑭地方創生への意欲が弱い、といった傾向が見られた。