中小企業支援ポリシーミックスにおける補助金の役割:サポーティング・インダストリーをケースとして

執筆者 鈴木 潤 (政策研究大学院大学)
発行日/NO. 2019年10月  19-J-059
研究プロジェクト イノベーション政策のフロンティア:マイクロデータからのエビデンス
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概要

近年、同一の政策目標に向けた複数の政策ツールをパッケージ化した“ポリシーミックス”の導入が見られるようになってきた。しかし、そのようなポリシーミックスの効果に関しては、いまだ十分に理解されているとは言い難い。本研究では、新世代の中小企業支援ポリシーミックスである、経済産業省の「サポーティング・インダストリー(通称:サポイン)」プログラムを取り上げた。研究の目的は、補助金そのものの効果のみならず、ポリシーミックスを構成する補助金以外の「ソフト支援(マッチングや仲介、コンサルティングなど)」の効果を検証することである。分析対象としたのは、サポイン補助金を受給した企業に加えて、補助金を申請したものの獲得することができなかった企業、そして補助金を申請していないがこれらの企業と非常に特性が近い企業(コントロール)である。効果を測る指標としては、売上や従業員数、特許出願数を用いた。分析結果が示しているのは、補助金交付前後の比較ではほとんど効果が見られないが、補助金獲得を目指して申請を行うことにより技術開発が刺激されるというものであった。以上の結果を踏まえ、補助金の役割は「コンテストへの参加を促すための呼び水」としての意義が大きいことを論じた。