消費者態度指数や資産価値予測は昼の長さに影響されるか?:SAD(季節性情動障害)仮説の検証

執筆者 関沢 洋一 (上席研究員)/小西 葉子 (上席研究員)
発行日/NO. 2019年10月  19-J-057
ダウンロード/関連リンク

概要

株価をはじめとした金融商品の価格変動などが季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder, SAD)と呼ばれる気分障害の影響を受けているとする仮説が経済学の一部の分野で提示されている。この仮説によれば、昼の長さが短くなる秋と冬にwinter-blueやより重度のうつ症状が生じ、それらの気分変動に起因するリスク回避度の高まりが株価等に影響を及ぼすと主張される。しかし、このようなSAD仮説については経済学内での批判も強く、加えて、最近の心理学の研究では、SAD仮説の前提となる季節性の気分変動が存在しないという主張があり、SADの存在自体が論争の対象になっている。そこで、本稿では、経済学におけるSAD仮説を支持する季節性の循環が内閣府の「消費動向調査」の家計の消費マインド(消費者態度指数)や資産価値予測において観察されるか否かを検証した。また、間接的ではあるが、関沢他 (2016) において、消費マインドとメンタルヘルス指標間に負の相関を観察していることから、SADの存在そのものを検証することを副次的な目的とした。分析には2004年から2018年の世帯レベルのパネルデータを用いた。分析結果より、消費者態度指数、資産価値予測の両方において、12月を底として初夏を頂点とする季節変動があること、緯度が高い地域ほど季節変動が大きいこと、昼が長いほど消費者態度指数と資産価値予測は改善することが明らかになった。本研究は経済現象におけるSAD仮説を支持し、心理学内で論争になっているSADの存在を間接的ながら支持する。