日本の金融政策:平成時代の回顧

執筆者 髙橋 亘 (大阪経済大学)
発行日/NO. 2019年10月  19-J-055
研究プロジェクト 産業再生と金融の役割に関する政策史研究
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概要

本稿は、バブルの生成・崩壊とその後のデフレ時代の約30年間に当る平成時代の日本の金融政策を論じている。このうち約20年前から現在まで実施されてきている非伝統的金融政策 (Unconventional Monetary Policies)については、それぞれの政策を要約したほか、従来から中央銀行が重視してきている金融政策の規律 (Discipline of Monetary Policy)に焦点を当てインフレ目標との関係、また財政政策との関係を論じている。また最後に独立した中央銀行としての日本銀行のあるべき姿も論じた。

ここでいう金融政策の規律とは、市場機能を最大限に生かしながら金融政策を運営するためのものである。市場操作では入札によること、中央銀行の資産購入は短期国債に限ること、この結果、中央銀行の資産規模は最小にすることなどである。いわゆる非伝統的な金融政策は、こうした規律を緩めるプロセスでもある。日本はその典型例である。

現在の金融政策である量的質的緩和政策は、6年を経てその目標に達していない。その主な背景は、長期間の成長力の停滞という構造的な問題である。インフレ抑制のための中央銀行の独立性という1990年代の議論は現在の状況に適応しない。中央銀行には、中長期的な立場から政府の経済政策に忠告を与えることが期待される。これが現在の状況で、独立した中央銀行に期待される役割であろう。