執筆者 | 徳井 丞次 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2019年10月 19-J-054 |
研究プロジェクト | 地域別・産業別データベースの拡充と分析-地域別・産業別生産性分析と地域間分業 |
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概要
サービス価格の水準に地域間で乖離があることを考慮に入れて都道府県別価格差指数を作成し労働生産性との相関をみると、正の相関を観察することができる。一方、国際経済学の分野では、先進国と発展途上国とを比較して前者の国内価格が後者の国内価格よりも高くなる傾向があることが知られており、こうした現象はバラッサ・サムエルソン効果と呼ばれている。国内の地域間で観察された価格差指数と労働生産性の関係は、これと類似の現象であり、地域版バラッサ・サムエルソン効果と呼ぶことができそうである。それでは、こうした類似の関係を成り立たせている背景要因も、国内地域間と国際間とで同じなのであろうか。先進国における貿易財部門と非貿易財部門との生産性格差に注目する国際版のバラッサ・サムエルソン効果の説明は、国内地域間で同様には成り立っておらず、地域版バラッサ・サムエルソン効果には別の背景要因の説明が必要となる。本研究では、その背景要因として、地域間の地価に起因する要因と、地域間の労働コストに起因する要因の二つを考え、両者の重要度を比較した。こうした研究を行うには、整合的な都道府県レベルの産業連関表と、通常は要素所得の営業余剰のなかに混ぜ込まれてしまっている土地サービス投入コストを推計する必要がある。こうしたデータ整備作業を2005年について行い、産業連関分析の価格モデルを適用して、土地サービス投入コストと労働サービス投入コストの価格波及を計算し、地域間価格差への波及にどちらがより重要かを分析した。