日本企業の為替リスク管理とインボイス通貨選択 平成30年度日本企業の海外現地法人アンケート調査結果概要

執筆者 伊藤 隆敏 (コロンビア大学 / 政策研究大学院大学)/鯉渕 賢 (中央大学)/佐藤 清隆 (横浜国立大学)/清水 順子 (学習院大学)/吉見 太洋 (中央大学)
発行日/NO. 2019年8月  19-J-042
研究プロジェクト 為替レートと国際通貨
ダウンロード/関連リンク

概要

本論文は、21,801社の海外現地法人を調査対象として2019年1月に調査票を送付して実施した「日本企業の海外現地法人に対するインボイス通貨選択アンケート調査」の回答企業2,051社の回答結果をまとめたものである。主な結果をまとめると以下のようになる。第一に、日本企業の海外現地法人が裁量的にインボイス通貨選択、および為替リスク管理を行っている割合が約6割であり、その傾向はこれまでの三回の調査を通じて変わっていない。第二に、人民元をはじめとするアジア通貨の利用は高まっており、アジア所在現地法人と日本との輸出入、および他の諸外国との輸出入において人民元とアジア現地通貨の利用が、過去二回の調査と比べて顕著に増加している。第三に、アジア諸国通貨の利用が増えたことの裏側で、アジア所在現地法人の米ドル建取引が減少している。特に日本を除く他の諸外国との貿易において米ドル建て取引の減少が大きい。第四に、アジア所在現地法人の日本からの中間財輸入では円建て取引が最大のシェアを占めているが、日本向けの輸出では米ドル建て取引のシェアが円建て取引のシェアを上回っている。この傾向は過去二回の調査でも同様に見られたが、今回の調査では日本向け輸出の円建てシェア低下が著しい。アジア所在現地法人の米ドルと円の利用は徐々に低下し、人民元などアジア現地通貨の利用が着実に増えていることが確認された。