機械学習手法を用いた不正会計の検知と予測

執筆者 宇宿 哲平 (あずさ監査法人)/近藤 聡 (あずさ監査法人)/白木 研吾 (あずさ監査法人)/菅 美希 (KPMG LLP)/宮川 大介 (一橋大学)
発行日/NO. 2019年7月  19-J-039
研究プロジェクト 企業金融・企業行動ダイナミクス研究会
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概要

本研究は、不正会計の検知と予測における機械学習手法の有用性を実証的に検討したものである。第一に、既存研究における限定的な変数に基づくパラメトリックモデルに代えて機械学習手法を用いることで、高次元の変数に基づく不正会計の「検知」を行い、その精度の改善を検証する。第二に、既存研究において十分に検討されていない不正会計の「予測」を同様のフレームワークで行う。第三に、構築された予測モデルの解釈を行う目的から、不正会計の予測結果(スコア)が、どのような情報に反応しているかを検討する。本邦上場企業の不正会計イベントを対象とした実証分析から、機械学習手法の利用が検知精度の改善に一部貢献するほか、当該手法の利用によって参照可能となる高次元の変数利用が検知精度の大幅な改善に貢献していることを確認した。また、機械学習ベースのモデルが実務的観点から十分な水準の予測精度を実現できることも確認した。本研究では、既存研究が理論的な想定に基づいて参照してきた変数以外の変数(例:ガバナンス関連変数)について、不正会計の検知・予測にあたって一定程度有用な情報が含まれていることも確認しており、不正会計の発生メカニズムに関する今後の理論的検討において参照すべき実証事実を示すものと考えられる。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:19-E-103