直接投資が国内の地域雇用に及ぼす影響

執筆者 清田 耕造 (リサーチアソシエイト)/滝澤 美帆 (学習院大学)/中島 賢太郎 (一橋大学)
発行日/NO. 2019年7月  19-J-038
研究プロジェクト 企業成長と産業成長に関するミクロ実証分析
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概要

本論文は日本企業の直接投資が国内の地域雇用に及ぼす影響を分析したものである。その目的は、日本企業の海外進出が国内雇用に及ぼす影響の地域差を明らかにすることにある。本論文では、企業の国内外の生産拠点の動向をより精緻に把握するため、『企業活動基本調査』、『海外事業活動基本調査』、『工業統計調査』を利用し、親会社、海外子会社、国内事業所を接続したデータを構築した。分析の期間は1995年から2012年である。分析の結果、直接投資に伴い、直接投資を行う企業の雇用はわずかに低下するものの、直接投資を行わない企業も含めた地域全体の雇用は微増することが明らかになった。すなわち、直接投資が日本の製造業の地域雇用に及ぼす影響は、日本全体でみるとわずかなプラスにすぎず、極めて限定的である。ただし、地域によっては、直接投資のプラスの影響はその他の要因によるマイナスの影響をほぼ相殺するほど大きいことも確認できた。これらの結果は、直接投資が地域雇用の下支えに重要な役割を果たしていることを示唆するものである。