セレクション・バイアスの補正や属性の構造変化を考慮したリピートセールス法による東京都内の不動産価格指標の推計

執筆者 沓澤 隆司 (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2019年4月  19-J-027
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概要

本論文では、東京都内のマンションの取引価格を元に、リピートセールス法による不動産価格指標の作成を試みるものである。不動産価格指標は都市の経済活力を示す上で大きな役割を果たすことから、欧米ではリピートセールス法による指標が示されている。日本ではヘドニック法による不動産価格指標が示されているが、過少な変数によるバイアスが懸念され、マンション価格による指標が住宅地や戸建住宅による指標に比べやや高い数値を示すことなどなお課題を残している。一方で、リピートセールス法も複数回取引されるサンプルのみが対象になるサンプル・セレクション・バイアスや不動産の属性が価格に与える影響が時系列の推移に応じて変化する構造変化の問題がある。そこで本論文ではHeckman (1979) が示した2段階推定法を用いて、サンプル・セレクション・バイアスを補正するとともに、不動産属性の構造変化を考慮したリピートセールス法による指標を試算し、その指標が住宅地や戸建住宅の水準により近い水準の指標となることが分かった。今後は、不動産価格指標の更なる改善と検証を図ることにより、より実態に即した指標の形成と不動産価格の分析を深化させていくことが必要である。