経済学者によるRCTは倫理的に問題か?日本におけるRCT型ウェブ調査からのエビデンス

執筆者 横尾 英史 (リサーチアソシエイト)
発行日/NO. 2019年1月  19-J-004
研究プロジェクト 日本におけるエビデンスに基づく政策の推進
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概要

RCT型フィールド実験に対する倫理観を明らかにするため、日本在住の約2,000人を対象に2種類のウェブ調査を実施した。まず、経済学者による実験6つを紹介し、「倫理的に問題があると感じるか?」を聞いた。調査の結果、List and Gneezy (2013)の保育園の研究では「問題がない」が過半数を占めた。逆に、Landry et al. (2006)の宝くじで寄付を募る研究では「問題がある」が過半数を占めた。実験の要素の変更により倫理的な問題意識を変化させられるかを研究するため、これら2つを題材として次の調査を実施した。ここでは無作為に選ばれた回答者に対して、実験の紹介文の内容を変えて提示した。その結果、保育園の研究において「子供が研究対象となることへの親の承諾がない」場合や「応募制ではなく無作為な標本抽出」とした場合に「問題がある」が増加した。また、RCTという研究デザインが問題である可能性を検証するため、前後比較で募金の研究を行う文と比較したものの、「問題がある」は減少しなかった。ただし、同じ研究デザインと処置でも、募金ではなく別の行動を対象とした場合には「問題がある」が減少した。日本の政策形成において、実験設計の工夫によって倫理的な嫌悪感を軽減しつつ政策の試行と評価を実施していくことが望まれる。