企業の先行き見通しの不確実性―法人企業景気予測調査のパネルデータによる分析―

執筆者 森川 正之 (副所長)
発行日/NO. 2018年4月  18-J-017
研究プロジェクト 流動化する日本経済における企業の国内経営と国際化に関する研究
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概要

本稿は、日本企業の先行き見通しに関する政府統計から作成した企業パネルデータ(2004Q2~2017Q1)を使用し、企業の先行き見通しの不確実性の動向およびそれが設備投資に及ぼす影響を分析する。その結果によれば、第1に、事後的な予測誤差から計測される不確実性指標は強い季節性を持っており、「不明」という選択肢の存在が関係している。第2に、不明回答企業割合は、株価のヴォラティリティや政策の不確実性指標(EPU)と正の相関を持っているのに対して、予測誤差に基づく不確実性指標とこれらとの相関は非常に弱い。第3に、不明回答企業割合で見た不確実性は、世界経済危機時に大幅に上昇しその後も高止まりしている。第4に、先行き不明という回答は、当該企業の1~2四半期後の現実の設備投資と明瞭な負の関係を持っている。また、国内景況よりも当該企業の業績の先行き見通しの不確実性が支配的な影響を持っている。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:18-E-030