海外現地法人の雇用創出・喪失と日本国内雇用との関係について

執筆者 荒木 祥太 (研究員)
発行日/NO. 2018年2月  18-J-007
研究プロジェクト RIETIデータ整備・活用
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概要

近年、日本企業、とくに大企業が世界中に拠点を構えつつ世界を股にかけて事業活動を行う例が増えてきている。そのような対外直接投資の増加による国内生産拠点の縮小が国内産業の労働需要の縮小をもたらし、国内の雇用が減少するという、いわゆる産業空洞化の懸念が常にあり、日本の多国籍企業の国内労働需要と国外労働需要との関係を明らかにすることは政策的に重要だと考えられる。
本稿は、経済産業省「企業活動基本調査」(1992年および1995年から2013年まで)および「海外事業活動基本調査」(1996年から2013年まで)の調査票情報を利用し、日本の多国籍企業における国内従業者数と海外従業者数およびその成長率を同時に観察し、両者の成長率との間の関係性について分析したものである。
本稿では、多国籍企業の海外従業者成長率から企業固有の要因を取り除いた外生的要因による成長率を算出、国内従業者数成長率との相関関係を計算することで、対外直接投資誘致政策のような外生的要因による海外従業者数の増加が国内従業者数を減らすのではないかという仮説を検証した。結果、マクロ経済的な要因による海外従業者数の増加は、国内従業者数の増加を引き起こすわけではないという結果を得た。