サードセクター組織におけるミッション・ドリフトの発生要因

執筆者 小田切 康彦 (徳島大学)
発行日/NO. 2017年11月  17-J-068
研究プロジェクト 官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究
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概要

社会的ミッションの達成を目的に活動するサードセクター組織に起こり得る問題の1つにミッション・ドリフト(mission drift)がある。ミッション・ドリフトは、サードセクター組織が本来行うべき社会的活動以外の事業活動に資源を集中させる結果、社会的な目的=ミッションから遠ざかってしまう問題として理解されている。しかし、先行研究は規範的な議論が多くを占め、実証的な評価はほとんどなされていない。本稿では、(独)経済産業研究所が実施した平成29年度「日本におけるサードセクターの経営実態に関する調査」の結果を基に、日本のサードセクター組織におけるミッション・ドリフトの発生要因を明らかにした。具体的には、総収入に占める各財源の比率―民間フィランソロフィー、政府資金、事業収入―およびHerfindahl - Hirschman Index(HHI)を説明変数に設定し、これらがミッション・ドリフトの発生に影響を及ぼすのか否か、検証を行った。結果として、ミッション・ドリフトの発生には、民間フィランソロフィーが負の影響、事業収入が正の影響、そして、HHIが正の影響、を及ぼすことが明らかになった。一方で、政府資金のミッション・ドリフトへの影響は観察されなかった。