再生可能エネルギー固定価格買取制度の法的問題―投資協定仲裁における争点―

執筆者 玉田 大 (神戸大学)
発行日/NO. 2017年10月  17-J-060
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第III期)
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概要

本稿は、再生可能エネルギー固定価格買取(FIT)制度を巡る投資仲裁判断例を分析した上で、その法的争点を抽出し、日本への示唆(投資家側および投資受入国側)を得るものである。第1に、欧米諸国(スペイン、イタリア、カナダ)では、FIT制度の運用・改廃に関連して、外国人投資家(申立人)が投資受入国(被申立人)を相手に仲裁に紛争を付託する案件が多発している。特に、固定価格(電力調達価格)および制度自体の急激な改廃に対して、投資協定上の投資保護義務(主に公正衡平待遇義務)の違反が主張される。第2に、対スペイン案件では、公正衡平待遇義務違反が認められた事例(Eiser事件)と否定された事件(Charanne事件、Isolux事件)が分かれている。対カナダ案件においても、違反認定事案(Windstream事件)と否定事案(Mesa事件)に分かれる。そこで、まずは仲裁判断の分岐の根拠を明らかにし、個別事案に固有の事実関係・請求内容を比較検討する。特に、FIT制度の廃止そのものについて義務違反が問われた案件の判断根拠を明らかにする。第3に、日本のFIT改正(2016年の改正FIT法)について、投資協定上の義務の観点から問題点の有無を検討する。