地域金融機関の競争環境が事業所の開廃業に与える影響

執筆者 播磨谷 浩三 (立命館大学)/尾崎 泰文 (釧路公立大学)
発行日/NO. 2017年8月  17-J-047
研究プロジェクト 地方創生に向けて地域金融に期待される役割-地域経済での雇用の質向上に貢献するための金融を目指して-
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概要

地方創生に関して、地域金融機関の役割にさまざまな期待が寄せられている。他方、地域金融機関は、2000年代半ばから地域密着型金融(リレバン)の機能強化を推進しており、地域経済の活性化を目指したさまざまな取り組みが進められている。しかしながら、地域経済の衰退に歯止めがかかっているとは言い難く、一部の大都市を除き、廃業数が開業数を超過する状況が長期的に続いているのが実情である。また、地域金融機関の中には、地方中核都市への新規出店の増加で店舗網が広域化している先も多く、都市部における競争度の高まりとは対照的に、地元での取引先との関係は希薄化している可能性が大きい。本論では、地域金融機関の競争度が民営事業所の開業率や廃業率にどのような影響を与えているのかについて、「経済センサス」の市区町村ベースのデータを用いて検証を行った。結果、競争度が低い地域ほど、開業率は高く、廃業率は低い傾向にあることが確かめられた。同様の結果は、事業所数に代えて従業者数を用いた場合についても確かめられた。これらの本論で明らかにされた内容は、地方における地域金融機関の存在意義を示すと同時に、貸し手の競争度の高まりは決してリレバンに寄与しないことを示唆する先行研究で明らかにされている内容と整合的である。