執筆者 | 梅島 修 (高崎経済大学) |
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発行日/NO. | 2017年7月 17-J-041 |
研究プロジェクト | 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第III期) |
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概要
中国は、WTO加盟時に中国産品のアンチダンピング税(「AD税」)の認定方法として非市場経済方式を適用することを認めた。本稿は、かかる適用を認めた中国WTO加盟議定書第15条a項のうちii号が2016年12月11日をもって失効したことによる、中国産品に課するAD税への影響と対応策を検討するものである。
輸入国は、非市場経済方式を適用することにより市場経済国産品に対するAD税率に比して大幅に高いAD税を広範な中国産品に課し、国内産業を保護してきた。このため、ii号失効後も当該適用が認められるかは重大な問題であり、多くの議論を呼んでいるが、失効後は、輸入国側が国内法令等に定めた基準に従って中国生産者が非市場経済の状況にあると立証した場合に非市場経済方式を適用することができるとの解釈が適切であろう。ただし、かかる基準は中国のWTO加盟時に定められているべきである。
中国は本件をWTO提訴しているが、市場経済方式に基づいて認定せざるを得ないこととなっても、一定の場合、AD協定の「特殊な市場状況」規定の範囲内で構成価額を用いた非市場経済方式に類似した方法を適用することは可能であると思われる。