日本の世帯属性別貯蓄率の動向について

執筆者 宇南山 卓 (ファカルティフェロー)/大野 太郎 (信州大学)
発行日/NO. 2017年4月  17-J-035
研究プロジェクト 持続的成長とマクロ経済政策
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概要

本稿では、全国消費実態調査・家計調査・家計消費状況調査を補完的に利用することで、マクロ統計と整合的な貯蓄率のデータを構築した。全国消費実態調査の年収・貯蓄等調査票を活用することで自営業世帯なども含めた全世帯での収入を把握し、税・社会保険料については世帯構成などから個別に推計した。消費についても、耐久財などの高額消費の過少性を補正し、帰属家賃なども考慮することでSNAとの整合性を確保した。そのデータを用いて、高齢化が貯蓄率に与えた影響を計測したところ、過去20年でのマクロ貯蓄率の低下のうち、高齢化という人口構成の変化で説明できるのは最大でも3割程度であった。これは、ライフサイクル仮説ではマクロの貯蓄動向を完全には説明できないことを意味しており、その原因について今後の検討が必要である。