執筆者 | 孟 健軍 (客員研究員) |
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発行日/NO. | 2017年4月 17-J-030 |
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概要
1949年の建国以来、中央と地方との財政関係を巡って何度も制度が改正されたが、1994年に分税制の財政制度が導入されたことは、中国経済構造転換にとって画期的な制度設計の1つとなっている。しかし、この制度は、中国経済の安定成長および中央財政の税収確保に寄与してきたものの、長年の集権的考えや制度自身の不備などによって地方政府には行政責任が重く税収が極めて不足するという構造問題に陥っている。財政収支赤字の拡大と政府債務の増大も加わり、中央と地方との財政関係を考える上で分税制の財政制度の新たな改革が中央政府に迫られている。
2013年11月に中央政府は、分税制の弊害に対する財政制度改革の方向性を提示し、制度化の動きも確実に推進してきている。そして2016年8月に国務院は、中央と地方の新しい財政関係を規定する全国レベルの財政政策を正式に発表した。これらの一連の税制改正を中心にした財政制度改革は、中国で財政の権限と行政の職権を統一する初めての制度設計の試みである。このような状況を踏まえ、本稿の目的は、財政制度改革や中央と地方の財政関係を再構築するための政策意図を探ることである。より具体的には、中央政府の財政制度改革の背景と要因を検討し、地方財政の健全化に向かって地方政府のガバナンスを強化する新しい財政制度構築について考察したい。