資源配分の変化に伴う地域の生産性向上と経済政策の役割―社会資本整備か規制緩和か―

執筆者 宮川 努 (ファカルティフェロー)/川崎 一泰 (東洋大学)/枝村 一磨 (科学技術・学術政策研究所)
発行日/NO. 2017年3月  17-J-022
研究プロジェクト 地域別・産業別データベースの拡充と分析 -地方創生のための基礎データ整備-
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概要

経済全体の生産性上昇率は、その経済を構成する各産業固有の生産性上昇率と産業間の資源配分の変化による生産性上昇率に分解できる。この点は地域経済についても同様である。そこで、R-JIPデータベースを利用して、各都道府県の生産性向上のうち、資本収益率差に沿って資本が移動することによる生産性向上とTFP格差に伴って労働力が移動することで生産性の向上が達成される項目に対して社会資本や構造改革特区がどのような影響を及ぼすかについて分析を行った。まず社会資本の影響では、資本収益率差に伴う生産性向上に対してはマイナスの効果しかもたらしていない。一方、産業別社会資本に限れば、生産性格差に伴う生産性向上効果に影響を及ぼしているという結果が得られる。2つ目として、2000年代に入って新たな地域政策として登場した構造改革特区の影響を検証した。この構造改革特区数の増加が資源配分に伴う生産性向上効果にどのような影響があったかを推計したところ、労働力の移動に伴う生産性向上効果に対しては有意な影響が観察された。